まるいち的風景

コラム: 「しお少々」が伝わるロボットが欲しい~『まるいち的風景』柳原望さんインタビュー

まるいち的風景 第1巻 (白泉社文庫 や 7-5)

まるいち的風景 第1巻 (白泉社文庫 や 7-5)

最終巻だけ持っていない気がする。取りあえず買い直します。

この漫画は工学者的に絶対お薦めだ。出た当初はロボット・VR関係者の中で話題騒然だった。……「一体誰がブレインなのか?」とw 結局の所、これといい、電脳コイルといい、ブレインはいないようだ。異なる世界の人間でも、真摯に観察し、きちんと考える力があれば、問題の急所をずばり突けるということなのだろう。むしろ、異なる世界だからこそ、思いこみを廃した指摘ができる。
見かけとストーリーはヌルい少女漫画だが、深い部分がすごい。機械と人間の関係について、これほど深い洞察を施している漫画はないと思う。こと洞察力だけで言えば、士郎正宗よりも押井守よりも上だろう(作品の構成力はまた別の話だ(苦笑))。サイバーパンクにはバックグラウンドがあったが、まるいちには無い。「心の豊かさ」「機械は悪」みたいな脳天気な話でもない。日本の機械文化・ロボット文化に根ざしたオリジナルだ。
まるいちを読んで以来、私も、人と人の間にある物を失わせないやり方を考えるようになった。携帯文化に対する嫌悪感よりも、携帯が文化を変えてしまった(そして何かを欠落させた)恐ろしさに強く反応できるようになった。行動トレース方式は、確かにお仕着せのモーションよりは遙かに難しいが、完全な創発による感情を持つインターフェースよりは遙かに簡単だ。こういう発想を具体化できるようになりたいと思う。


ついでと言っては何だが、マルチとまるいちの名前が似ていることにも、何やら人ならざるものの気配を感じざるを得ない。マルチは私にとってはアイドルだったし、完全な人工人格は夢だった。でも、以前考えたことと同じく、人工人格を完結したシステムとして統合することは間違っている気がしてきている。夢を解体してこそ、真のゴールが見えてくるのだろうか。