長森浩平/タイピング・ハイ! (2)

一巻は応募作だったらしいが、二巻に至るまでのどこかに、『脳の中の幽霊』が入っているに違いないと思う。言葉の端々、設定の端々からそう思う。
というわけで、原始の自分やモード別複数人格とその統合の話が正面に出てくる第二作。そこはそれ、ラノベなので、マッドサイエンティストが出てきて、この人格を入れ替えたり上書きしたりする。
こう聞くとSFちっくでわくわくするが、どうも料理法が気にくわない……
と言うのは、ロム君の性格付けが、この理屈で再定義されてしまうのだ。一巻を読んだときは、「これが現代の人間の本当の姿じゃないか」 という意図のものと解釈していたので(私自身も思い当たるところは沢山あるので)、「実は主人公は、自分では気付いていなかったけれど、ロボだったんですロボ。本当の自分は別に場所にいるんですロボ」 みたいな、中国語の部屋的後退は受け入れがたい。あろうことか、この巻以降、ロム君は『あるべき姿』に戻っていくと思われる示唆で、今作は終わる。
せっかく、前時代的な「私」への疑問から一足飛びに「そんなものは幻想だ」という現代的見地から先に進もうとしていた一巻の良さが失われている気がする。
まあ、代表作からのシリーズというのは、主題の再確認に終わらざるを得ないか……