インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

見てきたお。

総評

まあ評判通りかな……。一言で言えばクロスオーバー系二次創作。でも、動くインディを再び見られただけで、私にとってはレイトショー1200円の価値はあったよ! とにかく大好きだったから。でも正直、人には薦めない。いっそハムナプトラナショナル・トレジャーの方がマシかもしれん。

画質

画質は私は許せるな。CGのSFXも、それほど悪くない。撮影監督が替わったのに、可能な限り前3作を再現していて、絵的には安心して見れた。


(以下、甚だしくネタバレ)

SF(少し不思議)

スピルバーグはレイダース当時「未知との遭遇」「E.T.」なども撮っており、そういう観点ではSF要素に繋げたくなる気持ちは良く分かる。このシリーズは、元々が、考古学とは名ばかりのオーパーツもしくは超常現象を扱う話ばかりでもある。
とはいえ、やはり趣が変わることは否めない。

脚本

確かに。これはダメだ。キャラクターも謎も、薄っぺらい。逆に言えば、娯楽作品でありながら、前3作がいかに周到に練られていたかを改めて痛感した。

序盤は良かった気がする。冒頭、大学を追い出される辺りまでは素直に見れて、『シンドラー以降』を感じるなぁとぼんやり思っていた。ソ連兵にいいように扱われ、アメリカの暗い部分に負け、ヘンリーとブロディの写真を見ながら頬杖を付くインディが寂しくて。そのカットまでは、荒唐無稽なインディの世界にうまく時代描写を重ねていて、今まで見たことのない、居場所を無くした「負け組」インディを作り出していた。そこからどう復活するのか、期待ができた。

そこから後は終わってる。もう、いちいち書きはしないけど。序盤の積み重ねをあっさり放り投げ、いつものインディの上っ面を撫でている。この「娯楽冒険映画縛り」が、今作をダメにした最大の原因じゃなかろうか。

特にキャラクター達の描き込みは本当にひどかった。この人達は何をしているのだろう? ドラマ性の薄さは第2作に近いが、あれとは違って本筋のプロットの動機付けもほとんど無い。ちょっと変わったところで、ひどいなぁと思ったのは、時々襲ってくる原住民だ。今までこんなに無意味に出てくるザコ敵はいなかった。レイダース冒頭の原住民はベロックに扇動されていたし。その辺がもうがっかりだーがっかりだー。

謎やスリルに関しても、切迫感がない。辛かった。アクションが面白いのに、サスペンスがない。

序盤と同様、最後のシーンは、私は結構好き。あの結婚式の出席者は、息子のマットを除いて全員老人ばかりである。風で扉が開き、あの帽子が転がってくる。マットがそれを拾い上げ、ふと、自分の頭に載せてみようとする。それをインディがさらって、「まだまだだよ」と言いたげな顔を見せると、被って行ってしまう。片腕にマリオン。笑顔の老人達が付き従う。教会の外の白い世界へ、白い服を着た老人達が、笑いあいながら、去っていく。やれやれ、と言った表情のマットは、黒い革ジャンを肩に掛けて、それを追う。メッセージは明確だ。

老人の世界にSF要素を入れることで、話を進めるところは「コクーン」をかなり連想する。だがそこまでテーマを突き詰めて描いているわけではない。どのみち娯楽冒険映画である。

妄想するに、本作は「負け組インディが、やぶれかぶれで始めた冒険のさなか、かつての仲間や恋人と再会し、息子とも信頼関係を結んで行く中で自信と強さを取り戻し、最後は、考古学者としての自分が宇宙人に共感することで、アカだの核だのといった現代のパワーに打ち勝つ視座を思い出し、負け組としての自分を克服する」話を、最初は描きたかったのではないか。あくまで妄想だけど、パーツを拾っていくと、ひょっとして、と思う。こうしたプロットが「娯楽映画縛り」で引き裂かれたのだとすれば、悲しいことだ。