こうの史代/夕凪の街 桜の国

感動するのはこういうのだね。
声高なイデオロギーではなく、生活のレベルから見た戦争、原爆の話。主義主張がどれだけ揺れ動いても、実際の生活は連綿と続く。人が生きていく上での問題に落とさない限り、一歩も進むことは出来ない。当たり前だが、幸せになる権利は誰にでもある。憲法にも書いてあった気もする。
夕凪における直接的な死も、桜における、より遠くにあるぼんやりと折り重なった死の幻影も。桜の祝福は人の手によってしかならないものなのだ。
おっそろしくシンメトリーやリンクや伏線にこだわった細部もいい。けど、主要なトランジション以外は無視してもいいと思う。1ページ空白にも感心しない。話自体の、まあ変な言い方になるけど「正しさ」みたいなものの方が重要だ。