森山大輔 / クロノクルセイド (8)

最終巻。
素晴らしい! 良くやった!
六巻、七巻の微妙さが嘘のような、肝心の話に絞りきったストレートな描写で感動した。その分、本来なら必要なアクションや、アイオーンの事情も半ばうっちゃられているが、クロノのいいところは漫画と一体化した叙情性なので、これで良いのだと思う。そもそもパンデモニウムが微妙すぎた。あと、ありがちな理屈設定(「来訪者」とか)を容赦ないスピードで吹っ飛ばす点も好感。
EPILOGUEがまた、泣かせる。いいねっ。一貫したテーマである避けられぬ時間の運命は許容しつつも、到達点がきちんとある。こういうのが良いのです。夢ではない夢。現実が現実のまま昇華される瞬間。


舞台やキャラ設定の心地よさを上手く使って、「物語」の可能性を復活させてくれた点も、個人的には大変嬉しいのだけど、それ以上に、こんなストレートな話を現代で読めることが、ある意味幸せだなぁと。時代に必要なことを書ける機会と相応しい場を与えられた人というのは、本当に一握りなんだと思う。出来がどうであろうとも、元エロ漫画描きであろうとも(笑)、例えその哲学が否定され得るのだとしても、作者が自負と誇りと誠意を持って描いたことが分かる、魂のこもった良い作品でございました。かっこいい*1

*1:「かっこいい」は、私の最大の賛辞なのです。