渋滞学

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今頃読んだ。


読み物として面白かった。基本的には、セルオートマトンを各種応用に向けて精緻化していく話であって、それぞれの世界に適応させながら、様々なトピックが扱えることを示している。万華鏡のようにトピックが現れ過ぎ去っていくのが楽しい。

見所は前半と最後。

前半は、道路の渋滞および人の渋滞(特に避難時)の話。スピードに対して車列の密度が過密気味だが、頑張って一定間隔を保って走り続ける「メタ安定」状態が、何かの拍子に崩壊して渋滞になっていく。統計的に知られている現象を、セルオートマトンで再現している。本では、合流の直前にあるメタ安定状態はけっこう長持ちするという話が書いてあって、確かにそうだなと思った。合流の過密状態はいずれ解放されるという予測が頭にあるので、かなり我慢できる。

避難時のパニック状態をオートマトンに落とすのも面白い。

最終章は、「基礎研究は一心に基礎研究に打ち込むべき。応用へのつなぎは『基礎も応用も知る研究者』がやるべき」ということが熱く述べられていて、何というか、書きたかったんだろうなぁと圧倒される。個人的にも、自分は色々なレイヤを知る人間でありたいと思っているので、共感できるが、しかし著者の勉強っぷりは半端では無いのであった> http://d.hatena.ne.jp/hiyakkoikiton/20090102/1230873387

しかしまぁ、レベルに応じた生き方というものがあるであろう。