発想する会社! (The Art of Innovation)

isbn:415208426X
これも今頃読んだ。
ブレインストーミングブームやイノベーションブームの火付け役の一つであり、バイブル。
個人的感想を言えば、あまり感心しなかった。それはこの本の説くところが、知識としてはすでに遍く世に浸透していて新鮮味に欠けるせいでもあり、これが日本、特に自分の身の回りではそう簡単ではないせいでもあり、……もしくは幾つかの場所ではとっくの昔に常態化していることを私が知っているからだろう。あと、ここで書かれていることを" Innovation "として素直に受け取れない、偏屈で狭量な自分のせいでもある。
とはいえ、他人との共通言語として持っておくべき本だとは思った。効率的な探索を行うメソッドを言葉で形式知化している点で。

* Innovation *

  • ホット・チームで起きる他家受粉
    • 共通のゴール
      • ユーザの言うことは聞かず、観察する
    • 厳しいデッドライン
    • 個人の発想を助ける環境
      • 普段からメンタルを自由にし、自己表現できる環境
      • 小ネタの収集、場合によっては共有
      • 「練習問題」
    • ブレインストーミング
    • プロトタイピング

自慢話が多くて辟易するけど、読後の印象としては以上のようなことが書かれていた気がする。
肝は「ホット・チーム」+「他家受粉」の組み合わせであって、これが可能であれば、日本に合わせた他のやり方でも良い気がした。オフィスに自転車を持ち込んだり、派手ないたずらを楽しむのは、少なくとも私にとってはヒッピー文化かぶれと変わらない気がする。それよりは飲み屋やレストランで「語る」方が、気楽な自己表現としてやりやすいし、本気で怒鳴り合う方が相互理解は深まる。Project Xに出てくるホット・チームみたいなもので。


てか、メーカーの優れた開発の現場って、昔からこういう感じだと思う。色んな発想が持ち込まれて、デッドラインまでに共通の数値目標を達成する。
そういう観点で考えるとこの本の希有な所は、目標が数値じゃなく、製品ユーザビリティであることと、クライアントを限定しないデザイン専門会社であるがゆえに、個人が視野を極端に広げなければならない点じゃなかろうか。