ヒデ引退

さもありなん.
日本にはサッカーで世界で勝とうという気が無いし,世界に誇れるプレイをしようとか,誇れるプレイヤーになろうとか,あるいは後継の若者たちを鼓舞しようとか,サッカーの奥深い面白さを広めようとか,サッカーファンに特有の得体の知れない熱気を日本文化に根付かせようとかいう意思が無い.良くも悪くも90年代の,あやふやでグレイな日常をもって良しとする文化が蔓延し,一方メディアはポストモダン的に乖離した「SAMURAI BLUE」とやらを煽り続ける(サムライに謝れ!(c)HIDさん宏方(id:paraselene)さん(20060703修正) どこにいるんだよ,サムライ?).
そんな中で一人上を見続け,日本のレベルを遥かに踏み越えながら,世界基準での自分の位置が決して高いものではないと思い知ったヒデは,行く場所も帰る場所も失わざるを得ない.引退するにはちょうど良い,ここしかない頃合いであろう.お疲れ様.


彼の何よりの悲劇は,彼のスタイルを受け継ぐ者,あるいは彼の残したものを正しく受け取るスポーツ界というものに欠けていることだ.
私は,スポーツ選手では,オリジナルの世界観を独力で作り出すようなストイックなヒーローが好きで(それ以外にも好きなタイプはあるが),千代の富士と野茂秀雄と,サッカーで言えばダントツでヒデだなあと思っていた.千代の富士には朝青龍がいる(間違っても貴乃花ではない).野茂の業績とそれがもたらした展望や議論は,野球の好きな人なら誰でも理解できる素晴らしいものだったし,これからも続いていくだろう.
でも,ヒデにはそれはない.彼がすごい存在であることはプレイを見れば分かるが,誰もそれを大きな視野で消化して日本サッカーの未来につなげていくことができない.


あれですよ.今の日本サッカーが受け継いでいける唯一の伝統は,一子相伝のディフェンシブFWですから.
次は誰なのかしらね? 平山君に感染しないで欲しいんだけど.