Web 2.0が嫌われる理由 - My Life Between Silicon Valley and Japan

カーが正しい.
確かに蓋然的統計学の世界にシンパシーを覚えるのは容易ではない.それは一部のエンジニアの特権である.だが,そもそもそんな必要はないのだ.web2.0は社会の構造だが,同時に個々人の生活の基礎でもある.鳥瞰と虫瞰は切り離すことができない.同じものを上と下から見ているだけだからだ.上から見て最適だけど下から見ると圧政だ,なんてのは上古代から続く西欧的ストーリーであって,分かりやすいものだが,もはや現実ではない.そう思い込もうとしているだけだ.
web2.0は,webという地盤のアフォーダンスに従って,人間がその暮らし方を仕方なく移行させていった結果,暫定的に落ち込んだ局所解にすぎない.アフォーダンスなんて言うと一気に胡散臭くなるな…….要するに,web上で便利に暮らすためにはweb2.0の「蓋然的統計学」に則った暮らし方が楽だというだけだ.Googlezonは,我々が便利に暮らすために利用されているのだとも言える.
アンダーセンに代表される層は,単に異質な生活スタイル(もしくは思考スタイル)にスライドするのが恐ろしくて,その恐怖を合理化するために旧来の構造批判に新しい単語を当てて使っているように見える.もしくは,その恐怖を理系の異質さに対する恐怖が後押ししているように見える.
ただ,真の評価を下せるのは,さらに次のパラダイムに進んだとき(もしくは進めるか否か)だろう.web2.0的情報整理メソッドはいずれ飽和し,技術革新速度も落ち,人間が怠惰な生き物である限り,再び何らかの作りこみのコンテンツなりハブなりポータルなり情報政府なりが復権するだろう.そのとき,もしweb2.0時代の問題を解決する別のパラダイムに移行することがあるならば,アンダーセンの指摘が正しかったのかどうかが分かる.