キスだろうと、その先だろうと!

その先?
と、とっさにマッドテープを思い出した。懐かしい。
それはともかく、『おとボク』こと、処女はお姉さまに恋してる[caramel-box.com] 。これは良いものです。キシリア様もきっとお喜びになることでしょう。ウィッツさんが2005年ベストと言い切るのも分かります。私といたしましても、規格外のソフトを除けば、クオリティ勝負としてはベストを取れるのではないかと思いますわ。


以前、「○○という作品は存在しない。それはファン達が作り上げた架空の作品で、それほどではない作品を見るたびに上げられた『○○はもっと凄かった』『○○ならこうだった』というファンの声によって作られた理想の作品なのだ云々」 という内容のテンプレがあった。テンプレだったのかは知らないけれど。
貴子と紫苑を終了した時点では、おとぼくは、理想の『学園もの』に最も近い作品なのではないか、という気がする。To Heart直後の一人一シナリオブーム後、学園ものというジャンルは、家族ネタとも友情ネタとも成長ネタとも取れない、誰もが暗黙知として分かっていながら明確な解答を出せないゴールを探して彷徨いまくっていた。説得力を出すためには、エロゲであるということ自体が最大の障害だった。おとぼくは、舞台設定を上手く活用してその制約をプロットレベルで外し、書きたいことを、素直に、丁寧に書いて成功していると思う。引用や劇中劇の扱いを見ていても非常に自覚的だ。押しつけられたポジションを手がかりに社会性と優しさと強さを育んでいく、というメインストーリー自体は普通だが、お嬢様学校に本気で溶け込もうとしている瑞穂のキャラと、テンションを適切に保つ工夫によって、純度が飛躍的に上がっている。神話と民話の差は純度なのだ。
それと、普通に筆力がすごい。パラレル進行のサブストーリーを繋ぐ細かいシーン割りが、きちんと全体の印象までコントロールしてて、なおかつ一つ一つのエピソードも読ませる力がある。何となく舞台脚本のイメージがある。劇中劇周りの描写も凝っているし、その辺りの経験があるのだろうか。しかし、イマドキの方法論を余り使っていないので、記号付けは甘い。余りにも真面目に書きすぎという印象はする。ちゃんと読まない人には、つまらないだろう。


しかし、瑞穂お姉さまは素晴らしいですw こりゃ、人気投票で戦えるわけだわ……。あの凛々しいお姉さまのorzっぷりも大爆笑。
貴子会長は、良いのですが、微妙に芯を外してる印象。後半のデレが過剰というより、前半の埋め込みが下手ではないか。そもそも前半に出番が少なすぎ。会長もっとがんがれ。
紫苑さまもキャラ的には好きなのですが、やっぱり埋め込みとクライマックスの演出が……。特に巾着袋。こうして考えると、個別シナリオは実はちょっと弱いのかな。キャラ箱の方針という気もするが。