ここでインタビューです


「貴方の一番嫌いな物はなんですか」

「睡眠」

「……は?」

「眠り。寝ること。人間に課せられた一日一回気絶しなければならない習慣」

「睡眠が趣味だという方も多いのですが」

「時間の無駄だ。我々は、一年に丸々九十日近くの時間を、ただ眠るためだけに浪費している」

「寝ないと大変ですよ」

「覚醒時も睡眠時も消費カロリーは変わらない。肉体疲労の回復にはレム睡眠だけでいいはずだ。脳が眠る必要はない」

「脳が寝ないと大変ですよ。睡眠時間の四分の三はノンレム睡眠ですよ」

「そんな貴女にカートリッジ式海馬とクローン睡眠体」

「……………………は!?」

「まずクローン体を用意しよう。そしてこちらが調理済みのクローンだ」

「料理番組?」

「貴女のクローンは睡眠薬で眠り続けている。貴女の海馬カートリッジを、一回に一つずつこちらの身体に差して、貴女の代わりに寝てもらうわけだ。もちろん、海馬は実際にはカートリッジのごく一部に過ぎない。整理が必要な記憶領域全てをカートリッジ化する」

「え、ええと、あの」

「その通りだ。半分や四分の三の長期記憶では、日常生活を営むことが出来ない」

「はぁ」

「そこでRAID海馬ですよ」

「……」

「領域は狭くなるが、1+0がお薦めだ。実用的なクローン睡眠に必須となるホットスワップ可能なミラーリングと、ストライピングによる高速化が期待できる」

「寝てないんですね?」

「まず睡眠時間が短くなる。肉体が必要とする睡眠時間は全睡眠時間の四分の一であるから、貴女が平均六時間睡眠であれば、これからは毎日一時間半睡眠で良くなる。実際には睡眠周期の問題が絡むため、それよりは長くなるだろう」

「寝てないんでしょう。せっかく休日なんだから寝てください!」

「だが何よりも効果が高いのが、睡眠時間にも起きていられることだ。肉体を寝かせておけば、物を考えることができる。想像してみたまえ、睡眠のない世界を。予言が本当なら、一日二十四時間がフルに活用できる未来が来る。だから戦える。だから死ねるのだ」

「しっかりしてくださいぃぃぃ」